「そうか…いや、可笑しなこともあるものだ。」

やばい、ばれてる
の顔にはそんな思いが易々と読み取れた。しまった、とでも言うかのように視線を左右に揺らし、そして逃げ場がないことを確認して、観念してまた視線を俺に向けた。決心と名付けるには、まだ優しい。俺はゆっくりとした動作で立ち上がる。一歩一歩、テーブルを回ってに近づいていった。

「私はあの日、クルル曹長にも同じ質問をした。そして、彼の返事は君の答えとは、残念ながら一致しない。仮に君が正しいとすれば、クルル曹長は頭の狂ったストーカーまがいということになり、クルル曹長が正しいとすれば、君は共犯者だ。」

大袈裟に腕を組み、また一歩との距離を縮めた。ただならぬ空気を肌で感じたのか、はじりじりと後ずさりして、移動できない所まで辿り着いた。俺はのすぐ隣に膝を下ろす。今にも泣き出しそうな顔をして、は声が出せずに居る。びくりと震える体、腰にそっと手を回したその瞬間に、の目から一筋の涙が零れたのが見えた。
ああ、チーターに食われる兎の気持ちとはどんなものだろう。しかも、安心しきって草を食んでいるところを掻っ攫ってしまうのではなく―きっとその時は痛みを感じる間も与えられない―じりじりと追い詰められ、動きのとれない状況で、体中を舐め回されて、少しずつ食われていく、その気持ちは。

「そうそう…君とクルル曹長の一件は、私が色を付けて報告しておいた。よってお咎めはナシだ。」



一段とトーンを落として、俺はの耳元で囁いた。



「君は賢く美しい…この意味が分かるだろう?」



ひ、との引きつった呼吸が聞こえた。この兎は一口で食べてしまうにはもったいない。
俺は慈しむように頬を摺り寄せて、すると私の頬はの涙に濡れた。























晩餐会