画面に映るクルルは相変わらず踏ん反り返って、どこまでも、それこそ宇宙の果てまでも偉そうで、苛々する筈なのに懐かしくて、懐かしさに思わず頬が緩んでしまいそうになったのはここだけの話である。人を小馬鹿にしたような笑い声も、横柄な態度も、身勝手な考え方も、何一つ変わらずあの頃のままで、まったくいつまで経っても彼は成長できない、のではなく、成長しようとしない人なのだ。変わらないものに惹かれ、それを求めてしまう私も、あの頃と変わらず愚かであるのは自覚している。彼の言葉に一々耳を傾けていたら、私はあっと言う隙も与えられずに彼の蟻地獄に引き込まれてしまって、さらさらの砂に爪は立つ筈もなく、悲鳴は曇天に吸い込まれて、もう二度と地上に戻ることは許されなくなるだろう。一度目は、何とか逃げ出したのだ。彼の返事も待たずに、私は全力疾走だった。あの頃をひどく懐かしく思いだす。私の言葉に、彼は何一つ動じなかった。彼が地球に行くことを命令された日、蝋燭のようにじわじわと、しかし確かに短くなっていく彼との時間に、終止符を打とうとしたのは私で、変わらなかったのは彼だった。あの日を境に、彼のことを知らない人は居なくなった。いやに盛り上がる周囲とは逆に私は沈んでいって、多分、勝手にこれからのことを先捲ってひとり考え、ひとり、彼から逃げた。もう戻ってはいけない場所だと、自分で決めた、ことなのに。それなのに、彼の声を聞く度に心が震えた。虚勢を張ったのは、自分を奮い立たせるためだ。机を叩いた手の平は、鈍く痛んだ。改めて彼を睨みつけたときに、彼の背後にもうひとつの影が見えて、しかもそれは私と彼の上司で、極めつけに使っているのはその上司の回線で、もちろん正当なルートを辿って繋がれた交信ではなくて、彼への言葉は出て来なかった。紫の上司はいつもと何ら変わるところなく、評判の立ち振る舞いは相変わらず紳士的で、音の出なくなった鍵盤のように、私は声を出そうにも出せずにいた。

そこで、突然回線は途絶えた。


















胸奥