(淡いクリーム色の羊皮紙に、滑らかな運びの文字が並ぶ。インクは深いメープルブラウン。文字は大きくはないものの、行間が十分にあいている。)




生ける屍の水薬について



グリフィンドール、



 生ける屍の水薬(Draught of Living Death)とは、非常に強力な眠り薬のことである。アスフォデルの球根の粉末とニガヨモギを煎じつめることによって精製され、眠り薬としては余りに強力なのでこの名が付けられている。
 以下に、その材料についての詳細を述べたい。
 生ける屍の水薬の精製には、主にアスフォデル、ニガヨモギ、カノコソウ、催眠豆が使用される。ここでは、アスフォデルとニガヨモギについて記す。
 まずアスフォデルについてである。アスフォデルはユリ科の植物であり、夏季になると房状に白い花を付ける。ギリシャ語でアスフォデルス(asphodelus)は火山灰と谷を意味している。これは、アスフォデルには地下茎があるため、山火事によってあたり一面が火の海になろうとも、生き延びるという謂れがあるからである。また、死者の国に咲くとも言われ、そのため墓の近くに植えられることがある。
 次に、ニガヨモギについて述べる。ニガヨモギはキク科ヨモギ属の多年草であり、ワームウッド(worm wood)とも呼ばれるが、ここではワームとは蛇のことであり、楽園から追放された蛇がはった後からこの植物が生えてきたという伝説に由来するものである。バイキングの間では、これを見たものはただちに死する、とも噂される。
 この精製には様々な技術を使用するため、現在の魔法薬学のカリキュラムでは、これの実技は5年次に取り扱われることとなっている。精製の際には、正しい手順で行われれば、水薬は滑らかなクロスグリ色、明るいライラック色を経て完成される。

 私に言わせてもらえば、これほどまでに強力な睡眠薬がなぜ必要とされているのか、はなはだ疑問である。まかり間違えば、ちょっと惰眠を貪るつもりが、永遠の眠りについてしまうなんて、全く持ってまっぴらごめんもいいところである。願わくば、スネイプ教授がうっかり手を滑らせ、私の頭の上で生ける屍の水薬をひっくり返すことのないよう、祈るばかりである。



(黒に限りなく近い緑色のインク、細く大きな字体。書きなぐるようなアルファベットのあとに、走り書きしたように短くメッセージが記されている。)

B

ミス・は余計なひと言が多い。
よってグリフィンドールからは5点減点。
我輩の魔法薬学の授業の間、1度として、初めから終わりまで顔を上げていたのを見たことがない君には、まさに必要のないものであろうな。
少しは授業を聞きたまえ。

S.S