なんだこれは。

さて、なんでしょう。

物体として何なのかではない、訳を聞いているのだ。

さあて、一体何なのでしょう、あは。


白い花。
小指の先ほどの大きさの花が無数に集まって、まるで元からこの大きさの花なのですよ、とでも言うかのように自然に、花束はの手の中にあった。薄紅色の唇から、陶器のように白い歯が覗く。はあ。うっとりと、目を細める。


これ、白いですよねえ、小さいのに。


スネイプの眉間に、さらに深く、皺が刻まれた。
採点中のレポートには、赤く、インクのしみが広がっていく。それでも、羽ペンは動くことをしないのだ。それは、スネイプが赤いしみに気づいていないから、から目を離せずにいるからだ。


白くちゃ、いけないのか。

いけないんです、目立つから。


ため息。羽ペンは投げ出される。しみに一瞥くれてやって、スネイプは造作もなく杖を振った。何というわけもなく、提出された時の状態のレポートに還る。大きさの揃った、癖字が行儀よく並んで、再び読まれるのを息をひそめて待つのだ。


ちいさいものは、壊れやすいから、壊されやすいから、白くっちゃいけないんです、ね、先生。

破壊を免れるほど強いものもいるだろう、それはそれ自身が好む色をまとってもかまわないだろう。

ちがいます、弱い者は、黒をまとうのです。

ゆるゆると笑っていたは、首を傾げた。瞳が揺れた。そして、ここで初めてスネイプの存在を認めたかのように、目を丸くした。弧を描いていた唇がゆっくりと元に、スネイプの瞳を見つめる。緑の黒髪はしなやかに、おそろいの瞳は深く、ホグワーツの校章入りローブを身に着けて。何の感情も読み取れない、けれど愛おしげに花の集まりに顔を寄せる。

…よかろう。

また、スネイプは軽やかに杖を一振りした。とたんに、消える花。磁石のように体が引き寄せられて、ああ、まるでS極とN極だ。

…逃げるな。

弱いものは、やわらかく、あたたかく、薬品のにおいがした。






弱肉弱食